スキル内課金をデザインする

スムーズな購入

ここまで、優秀なセールスマンをお手本にアップセルの方法を学んできました。ゲームの力を利用してユーザーをエクスペリエンスに引き込み、彼らを理解しようともしました。ユーザーを引き付けることができたら、最小限の労力で最大限の効果を上げられる波に乗って、アップセルを出してユーザーが最も買ってくれそうな商品を提案できます。

ディーラーで車を買うケースなら、たいていは、ここでファイナンス部門に案内されて最終的な値段、支払いについて話し合い、契約書にサインするという流れになるでしょう。ユーザーがアップセルの提案に対して「はい」と答えた場合も同様で、Amazon購入フローと呼ばれる「ファイナンス部門」に引き渡すことになります。

Amazon購入フローで取引の詳細をすべて処理し、ユーザーが購入したかどうかにかかわらず、ユーザーを再びスキルに引き渡します。では、Amazon購入フローの処理を細かく見ていきましょう。

  1. 商品詳細ページに書かれた商品情報を話し言葉に変換します。
  2. 価格情報を計算します。ここにはAmazonプライム会員向けの割引も含まれます。
  3. アカウントに関連付けられたクレジットカードで支払いを処理します。
  4. 音声PINを検証します(ユーザーが設定している場合)。
  5. 支払い情報が無効、PINが間違っているなど、取引関連のエラーを出力します。

取引が完了したら、再びスキルに遷移します。ここで取引が完了したのか、エラーにより拒否されたのか、失敗したのかをチェックし、それに応じた応答をするかどうかは、スキルのデザイン次第です。

アップセルや商品の説明に価格情報を含めないでください。適用される割引を含め、価格情報はAmazon購入フローによって計算されます。価格情報を含むスキルは認定に合格できません。

スキルとAmazon購入フローが連携して販売を完了させることを理解したところで、次は、スキルと購入フローとの間の遷移をどうするかについて検討します。

スムーズな購入

スキルダイアログを書く際は、ユーザーをスキルからAmazon購入フローに引き渡し、購入完了後にスキルに戻ってくることを念頭に置いておく必要があります。購入フローが商品を説明し、価格情報を伝えます。商品説明は、ツイートの文字数制限より短い60字までです。 このため、簡潔にまとめる必要があります。

Amazon購入フローは音声合成マークアップ言語(SSML)をサポートしないため、購入フローで商品を説明する際にAlexaの音声を完全にカスタマイズすることはできません。

購入フローへの遷移をデザインする際、まずは「ハッピーパス」(スキルデザインで考えられる最高の条件のシナリオ)から考え、Amazon購入フローにどう組み合わせていくかを検討します。会話全体を何度も実際に演じてみて、遷移がスムーズでスキルとAmazon購入フローとの切り替わりが唐突になっていないかを確認するようにしてください。 

では、JustinとAlisonによるスムーズな遷移の例を観てみましょう。ビデオを観ながら、この会話の流れがスムーズかどうかを考えてみてください。

一貫したエクスペリエンスにはスムーズな遷移が重要:

かなりスムーズですね。 ここでは、Justinは、Amazon購入フローが既に言った詳細情報を繰り返さないようにしています。そうすることで、Alisonには複数のJustinではなく、ただ1人のJustinと話しているように感じられます。購入後、JustinはAlisonに、買ったばかりの商品を使って今すぐプレイするかどうかをたずねています。

Amazon購入フローはスキルの用意した商品説明に価格情報を組み合わせて応答を作成し、アップセルに「はい」と答えたユーザーに説明します。では、スキル側で書いた説明とAmazon購入フローが生成した応答に分けて、詳しく見ていきましょう。

商品説明(60字まで)

Seattle Super Triviaのホリデーパックには、いつでも挑戦できる50問の追加クイズが含まれています。

Amazon購入フロー

99セントに加えて消費税がかかります。購入しますか?

遷移がうまくいかない状況が3つ考えられます。こうした状況を意識してダイアログを準備してください。

  1. Amazonが出した最後のアップセルメッセージで取引が拒否された場合。
  2. Amazon購入フローでエラーが発生した場合。
  3. Amazon購入フローがダウンしている場合。このケースは非常にまれですが、ダイアログとしてこのケースに特化した応答を用意しておく必要があります。

これらの状況では、それぞれのケースでユーザーに伝えるメッセージをどう書くか、特に気を配る必要があります。購入フローが終わるとユーザーはスキルに戻ってくるため、ユーザーがAmazon購入フローから既に聞いている内容は繰り返さないようにしてください。また、これら3つの状況では、すぐにもう一度試すかどうかをたずねてはいけません。その代わり、購入をしないでスキルを使い続けるかどうかのプロンプトを出します。ユーザーが無料コンテンツをすべてプレイし終わっていたら、もう一度プレイするかどうかをたずねても構いません。Seattle Super Triviaでは、新しいクイズに挑戦するなら明日もう一度プレイするよう勧め、今日のフリーファイブをもう一度プレイするかどうかをたずねるようにしました。

無料お試しにサブスクリプションが必要なら、ユーザーに現時点でコンテンツを利用できないことをお詫びする必要があります。

遷移を処理する際、次の点に注意してください。

  1. Amazon購入フローで既にユーザーに伝えた内容を繰り返さない。
  2. すぐにもう一度試すかどうかを尋ねない。
  3. 購入をしないでスキルを使い続けるかどうかのプロンプトを出す。

考慮が必要な状況と遷移のダイアログで避けるべきことを理解したところで、取引で問題が発生した場合にSeattle Super Triviaではどう対処したかを見てみましょう。

スキル: 「クイズは楽しめましたか? 冬休みの話をすると七面鳥が食べたくなりますね。さて、ホリデーパックをご購入いただくと休暇に関連したクイズが50問追加されます。入手方法を知りたいですか?」
ユーザー: 「はい」
Amazon: 「Seattle Super Triviaのホリデーパックには、いつでも挑戦できる50問の追加クイズが含まれています。99セントに加えて消費税がかかります。購入しますか?」
ユーザー: 「はい」
Amazon: 「支払い方法が正しく設定されていません。アレクサアプリで詳細を確認してください」
<スキルに遷移する>
スキル: 「大丈夫です。パックについては後からいつでも聞くことができます。では、今日のトリビアクイズにもう一度挑戦しますか?」
…​

— Seattle Super Trivia

スキルが「すみません」と言っていないことに気付きましたか?Amazon購入フローが支払いを処理できなかったのは、スキルの不備ではないためです。エラーや商品に関する情報を繰り返すこともしていませんし、もう一度購入を試すよう提案することもしていません。ただ、もう一度プレイするかどうかプロンプトを出しただけです。

キャンセルと返金の処理

Amazon購入フローでは、購入だけでなくサブスクリプションのキャンセルと返金も処理します。ユーザーがサブスクリプションのキャンセルを希望したら、スキルはユーザーをAmazon購入フローに引き渡す必要があります。購入フローでは終了に関する規約を説明し、ユーザーにキャンセルをするかどうかをもう一度たずねます。スキルは、中断したところに戻ってプレイを続行する方法を伝える必要があります。

ユーザーがサブスクリプション以外の購入のキャンセルまたは返金をリクエストした場合、スキルはユーザーのAlexaアプリにキャンセルまたは返金に関する情報のカードを表示させる必要があります。返金が保証されるかのように受け取れる内容は言わないでください。そのためにはユーザーがカスタマーサービスに連絡する必要があるからです。

次のようなメッセージは避けてください。

プレイしてくださりありがとうございました。返金については、Alexaアプリにリンクを送信しましたので、そちらで確認してください。

次のようなメッセージにしてください。

プレイしてくださりありがとうございました。返金に関する情報をAlexaアプリに送信しました。

吹き替えやAmazon Pollyの音声を使える箇所について

既に述べたように、Amazon購入フローが価格を伝えるダイアログでの商品説明では、SSMLがサポートされません。つまり、Amazon購入フローでは吹き替え録音やAmazon Pollyの音声を使えないということです。

Amazon購入フローでは、Alexaの音声と画面付きのデバイス向けの標準APL(Alexa Presentation Language)を使います。カスタマイズはできません。どの商品説明をスキル内で選択した音声で伝え、どの説明をAmazon購入フローで伝えるかを検討する必要があります。

ここまででスキルと購入フローの間の遷移を理解しましたので、次は、ユーザーが購入したプレミアムコンテンツにどうアクセスできるようにするかを考えていきましょう。