音声エクスペリエンスは、基本的な人間の会話に基づく、ユーザーとシステムの間の双方向の対話です。人間が効果的に会話をするには、話者同士がメンタルモデルを共有し、互いに目標、質問、意図を伝える必要があります。音声エクスペリエンスが人間の会話を利用できるようになればなるほど、システムの使い方をユーザーに教える必要は少なくなります。
ユーザーとシステム間の音声エクスペリエンスをデザインする場合、デザイナーの役割は、ユーザーのニーズやユーザージャーニーを掘り下げ、エクスペリエンス全体の流れを示すストーリーボードを作成して、これらの会話をマッピングすることです。デザインフェーズで単独でスキルを開発する場合でも、開発者チームと連携しながらデザイナーとして働く場合でも、このようなデザインを繰り返すことが、ユーザーが満足する魅力的なエクスペリエンスの作成に役立ちます。
音声エクスペリエンスのデザインプロセスには、音声エクスペリエンスのアイデアの概念化、ユーザージャーニーの作成、スキルの人格のデザイン、ストーリーボードの作成、デザインのプロトタイプ作成、デザインのテスト、改善のための反復処理など、いくつかのフェーズが含まれます。
音声エクスペリエンスの強みがユーザーを惹きつけます。音声ユーザーインターフェース(VUI)の強みを以下に示します。
また、ユーザーが求めているのは日常生活に付加価値をもたらすスキルです。Alexaスキルを概念化する際、以下のようなことを考えてみるとよいでしょう。
ユーザージャーニーは、開発者が提供する製品とユーザー間の対話と、その中でユーザーが完了する目標で構成されます。
その意味をもう少し深く考えてみましょう。
対話とは、ユーザーが製品を使用するステップです。ウェブサイトではハイパーリンクのクリック、モバイルデバイスではさまざまなタップとスワイプ、Alexaの場合はユーザーの発話です。
目標は、ユーザーが製品を使用して達成しようとしている内容です。ほとんどの場合、ユーザーはこれらの目標をシンプルな方法でスムーズに、短時間で達成しようとします。
ユーザージャーニーを作成するときは、この形式に従う必要があります。
これらのユーザージャーニーは、フロー図とは異なります。この図は常に、1つの目標から次の目標へと進み、分岐することはありません。重要なことは、可能性のあるすべてのパスを示すことではなく、ユーザーを目標に導く理想的なパスを示すことです。
Alexaスキルはもともと、ユーザーが話しかけてスキルが応答する双方向のダイアログです。ユーザーとスキルが協力して目標を達成します。ここでは、ダイアログでのスキル側の応答について見てみましょう。ただし、今すぐダイアログの作成に進むのではなく、少し離れたところからスキルの人格を明確にイメージする必要があります。この人格は、スキルの音声と視覚的アイデンティティの組み合わせです。スキルの人格は1つであるとユーザーが感じられるようにします。
この人格を構築するには、いくつかの簡単なステップがあります。
作業を始める前に、クイックリファレンスのスケッチファイルをダウンロードしてください。
スキルをデザインする際には、ユーザーとAlexaの両方の観点から考慮すべきことがたくさんあります。
ユーザーについては、次の要素をデザインする必要があります。
Alexaについては、以下の応答をデザインする必要があります。
これらすべての要素を1つの構成要素に結合するには、ストーリーボードと呼ばれるデザイン手法を使用します。ストーリーボードは、ユーザージャーニー、画面、シナリオで構成されるデザイン構成要素で、ユーザーによるスキルの操作を整理して他者に伝えるのに役立ちます。
次の例は、ケーキを注文するスキルのストーリーボードです。
ストーリーボードの画面セクションでは、画面の表示方法の例を示します。最初は、完全にレイアウトされた画面をデザインする必要はなく、メインコンテンツになる対象に重点を置きます。
ストーリーボードの作成を開始する前に、スケッチファイルを参照してください。このファイルには、入力して独自のスキルタイプを作成するためのストーリーボードがあります。
プロトタイプは、デザインを関係者に伝えたり、フィードバックを得るためにユーザーの前でコンセプトを披露したりするのに便利です。ストーリーボードをいくつか作成したら、それらを基にしてデザインのプロトタイプ作成を開始できます。
以下のツールは、このプロセスを簡単にするのに役立ちます。
Adobe XDのAdobe XD UIキットを使用して、APL画面をより簡単にデザインできます。タップ、タッチ、音声トリガーなどの対話方法を使用して画面をまとめることができます。画面間で転送する場合、Adobe XDは音声再生とビジュアル表示を有効にします。プロトタイプはAdobe XD内とEcho Showデバイス上で表示できます。「Alexa Open Adobe XD」と話しかけるだけで、独自のデバイスのプロトタイプを試すことができます。(日本未対応)
Alexa Design System Sketchツールキットには、Alexa Presentation Language(APL)で構築されるマルチモーダルスキルをデザインするためのライブラリとテンプレートが含まれています。これらのライブラリとテンプレートは、コードベースのAlexaスタイルとAlexaレイアウトパッケージを表します。レスポンシブ対応テンプレートとレスポンシブ対応コンポーネントは、さまざまなviewportプロファイルに自動的に適応します。Amazonは、APLのメジャーリリースごとにツールキットを更新しているので、常に最先端のツールを使用してデザインできます。
ダウンロード可能なツールキットには、次の機能が含まれています。
話し言葉と書き言葉は同じではありません。スキルの人格のデザインに関する記事で説明したように、話し言葉では、トーン、ピッチ、話す速度、単語の強調が一定ではありません。声は落ち着いているときも、驚いたようなときもあります。Amazon Polly読み上げツールを使用して、シナリオで記述した内容を実際に音声で確認し、Alexa応答のサンプルをダウンロードできます。Amazon Polly読み上げツールでは、音声合成マークアップ言語(SSML)を使用して、一時停止やその他の音声効果を音声出力に追加することもできます。
プロトタイプを作成したら、実際のユーザーに見てもらいましょう。できれば、製品に関与していないユーザーにプロトタイプを試してもらうことが望ましいです。予算があれば、usertesting.com(http://usertesting.com/)などのツールを使用して、ユーザーを募集できます。予算がない場合は、家族や友人を登録してください。テストでは、何もフィードバックがないのがよいわけではありません。ユーザーからのフィードバックは常に大切です。
以下のような疑問に答える際に、ユーザーフィードバックが役立ちます。
早い段階でテストを行うことで、ソリューションのコーディングを開始する前に、正しい決定を下していることを確信できます。
音声エクスペリエンスをデザインする際は、次のベストプラクティスを念頭に置いてください。