Alexa Developerスキルアワード2019キッズ部門を受賞した『サカナノジカン』を開発した國川雅司氏、 南島康一氏、小川麟太郎氏は、6月9日に行われたスキルアワードハッカソンで出会い、結成されたチームです。スキルアワードを通した経験や、スキル開発の工夫などを伺いました。
國川雅司氏 (クラウド技術 エンジニア )
南島康一 氏 (株式会社カラーズ サーバーサイドエンジニア)
小川麟太郎氏 (電通デジタル クリエーティブプランナー/アートディレクター)
― なぜハッカソンに参加しようと思ったのですか?
國川:シンプルに楽しそうだな、と思って参加しました。デザイナーに出会えたらいいな、くらいの気持ちでいました。
南島:これまでハッカソンに参加したことがなかったのですが、Alexaハッカソンは、参加にあたり敷居が低かったので、思い切って参加してみようと思いました。スキルアワードにも興味があったので、一石二鳥になるかなとも思いました。
小川:普段業務で、VUI関連の調査やプランニングをしていて、VUIの生かし方についてもっと知ることができればと思っていました。また、Alexaで何が実現できるかをエンジニアと一緒に考え、試してみる機会がなかったこともあります。ハッカソンに参加し、作品を好きにアレンジしながら、どうしたら面白くなるかを研究してみたいと思いました。
― ハッカソンでは、どのようにチームを作ったのですか?
國川:僕は、あまりそこは上手ではなくて……(笑)
小川:國川さんのアイデアを見て、面白いと思い、自分から声を掛けました。個人のアイデアをみんなで投票し、みんなで自由にマッチングしていくハッカソンの仕組みは良かったと思います。
南島:自分で作成してもいいかな、と思っていたのですが、せっかくハッカソンにきてみたし、アイデアをみてちょっとやってみようと思い、チームに参加してみました。
― スキルのアイデアは初めからあったのでしょうか?
國川: Echo Spotの画面を見ていて、金魚鉢のように見えたのが発端で、水槽に見立てたスキルを作ってみたいなと思いました。キッズ向けのスキルにしようと決めたのは、ハッカソン中です。
南島:初めは課金メインで考えていたのですが、キッズは課金ができないということから、課金をとるか、キッズで行くかを考えて、キッズで行こうと決定しました。
― より面白いスキルにするために、どのような工夫をしましたか?
國川:時間が経つと、“サカナの状態が変わる”という点にこだわりました。お腹がすいたり、水槽が汚れたり、サカナが遊んで欲しがったり、など、開くたびに新しい発見があるように工夫しました。また、10日間経つと、サカナが成魚に変わる、といった遊び心を加えました。
小川:サカナのパターンは、ベースが12枚くらいあり、色バリエーションがあり、動画があり、画像があり、ボツ案もあり、かなりの数を作成しました。
― VUIのデザインはどのように行いましたか?
小川:序盤はフローチャートを使って、整理を行いました。話しことばやバリエーションは盛り込まず、インテントの整理や進め方のみにフォーカスしました。その後、Alexa(話者)のパーソナリティーを設定しました。どういった人から子どもに話しかけているのか、話者が言うこと、言わないことのルールを設定し、シナリオで切って会話を書き起こしていきました。会話を膨らませ、初回起動時、毎日繰り返して使う時、などに分けて会話を作成しました。
― 普段の仕事を今回のスキル開発の役割でどのように生かすことができましたか?
國川:普段はインフラ側の仕事をしていて、デザイナーと一緒に仕事をする機会が全くないので、デザイナー側から出てくるものが、とても新鮮でした。自分が出したアイデアをデザイナーがブラッシュアップし、それをもう一度自分が作るといった作業です。もともとあったアイデアをさらに洗練させてくれたことに、感動しました。
― ハッカソン参加後は、どのように開発を進めましたか?
小川:かなり初期の段階でコンセプトボートを作成しました。サカナノジカンの世界感や、このように使ってほしい、こういったターゲットに使ってほしいといった部分を1枚にまとめたのが良かったです。この1枚に、スキルの進め方、サカナをお世話した時のリアクションなどをすべてまとめ、これを実現するには各自が何をすべきかの分担を明確化することができました。また、この工程は削らないと間に合わない、などの見通しを立てることもできました。
― ドット絵にした理由は何ですか?
小川:工数的な部分もありましたが、一番はターゲットを3〜4歳に設定したことです。この年齢層の子どもが生き物だとちゃんと認識でき、かつ色彩が楽しめるビジュアルを目指す場合、実物に近い見た目のものよりも、ドット絵にデフォルメすることで、世界観に没頭してもらえると考えました。応募した時は、時間的な制約もあり、青だけで勝負したのですが。最終的には、赤、青、黄色の3色で展開し、育っていくサカナがそれぞれ違う見た目になっています。子どもたちが“私のは丸っこい”“私のはとんがっている”のような個性を出し、楽しんでもらえる世界を思い描いて作成していました。
國川:はじめドットの画像を見た時は、オーと思いました(笑)ハッカソンの時とはかなり変わっていたので。
小川:絵は、みんなに原画を見せて、男の子だったら?女の子だったら?変わったものが好きな子だったら?のようにパターンをいくつか作成し、話し合いながら決めていきました。
― ハッカソンに参加してよかったことは?
小川:初ハッカソンだったので、かなり緊張しながら参加したのですが、自分では思いつくことのできないコアアイデアを生み出せたことが大きかったです。また、仕事の合間の短い時間の中で、お互い刺激し合いながら、スケジュールを切って開発・制作を進められたのは、すごく良い経験でした。
南島:チームと出会えたこと。新しい発見もありましたし、ハッカソン自体が好きになるきっかけになりました。また、仕事外の仲間と出会い、モノを作る体験をすることができました。ビジネスと趣味の中間地点に位置しているため、ほどよい緊張感の中で楽しみながら、心地よく制作をすることができました。
國川: Alexaが好きな友人に出会えたこと。またアイデア自体は持っていたけれど、自分ひとりでは、サカナをデザインすることが出来なかったため、仲間に出会うことができてよかったです。
― 開発で苦労したポイントは?
南島:デザインでやりたかったことを、そのまま実現できない部分がありました。具体的には、ウエイクワード無しに、Alexaの待機中にサカナや海藻がゆらゆら揺れたりといったことは、実現できませんでした。※詳しい開発のお話は、南島氏のブログをご覧ください。
― 開発するにあたり、今後どのような機能を期待していますか?
南島:発話待ちで、アニメーションを動かせるようになってほしいです。
小川:アイドル状態を自分で設定できるようになったら、影響が大きいなと思います。アートを飾るといった使い方もできるようになるのでは?スキルを動かし続けることができれば、更に魅力的になるように思います。SSMLの調整ももう少し、自然になるといいですね。
南島:AVGをもっと簡単に使えるようにしてほしいです。
― スキルアワードに参加し、変化したことはありますか?
國川:社外の方の経験や知識を共有してもらえる場はなかなかありませんが、今回、個人としてすごく成長することができました。技術的なアドバイスを受けることが出来たり、デザイナーと一緒に仕事をすることが、とてもいい経験になり、楽しい緊張感の中で、作品を作ることができました。
小川:この領域の仕事を、もっとやってみたい、もっといろんな人を絡ませたい、といったモチベーションがわいてきました。
南島:仕事でも、スマートスピーカーで何かできるのではないか、といった可能性を感じるようになりました。一方、今回の企画は仕事外なので、いい意味で損得勘定なく力を発揮することができたのもよかった点です。
― 今後の活動について、どう考えていますか?
南島:サカナノジカンは、無理やり課金に紐づけようとすると、コンセプトが歪んでしまう可能性があるため、無理をして課金を付けようとは思っていません。
小川:このチームで、何かできるかを考えています。新しいアイデア出しをオンラインで行っています。
― 今度アワードやハッカソンに参加する人達に向けてのアドバイスを教えてください
南島:成功要因はチームワークだったと思います。「3人」という人数構成も良かったです。
南島、小川:ハッカソンは、参加して損はないから行ってみるといいと思います。勉強になることは非常に多かったです。絶対に何かしら得るものがあります。
國川、南島、小川:それぞれが、お互いを尊重しながら、コンセプトを貫き通すことができたのが、勝因でしたね。
■ ぜひ「サカナノジカン」チーム作成の紹介動画もご覧ください⇒動画を見る