自治体名:横浜市若葉台団地
業種:自治会
設立:1979年
所在地:〒241-0801 神奈川県横浜市旭区若葉台
入居者数:約13,000人(2025年3月現在)
ホームページ:https://wakabadai-kc.or.jp/
約90 ヘクタールにおよぶ広大な敷地を有する、自然豊かな丘陵地に開発された横浜市旭区の「横浜若葉台団地」。高層住宅をはじめ、さまざまなレクリエーション施設が計画的に配置された若葉台団地は、1979年3月の入居開始から人気を集め、1990年にはその数は2万人を超えていました。しかし、46年ほど過ぎた今、少子高齢化によって人口は約13,000人、6,712 世帯に減少しています。また居住者のうち、65 歳以上の入居者が 約7,400人と全体のおよそ55%に達しており、さらなる少子高齢化が懸念されていました。
若葉台連合自治会 会長の菅尾 貞登 氏は、「少子高齢化や人口減少に伴い、高齢者や子どもの見守りや声かけ、自宅訪問を行う人手不足といった課題はますます深刻化していくでしょう。高齢者福祉の充実と同時に、子育て世帯が安心・安全に暮らせる環境づくりは急務です」と説明します。
認定NPO法人若葉台 理事長 白岩 正明 氏も次のように続けます。「現在、高齢者の独居世帯は1,300戸と、若葉台団地の全住戸数の20%まで達しており、限られた人数の民生委員がすべての独居世帯の見守りを行うことに限界を迎えつつあります。この課題を解決するためには、住民同士の見守りや助け合いに加えて、デジタル技術の活用が不可欠です」(白岩氏)
そして近年、総務省の主導のもと、デジタル技術を活用した地域課題を解決する「スマートシティサービス」の推進が活性化しています。若葉台団地も一般社団法人コンパクトスマートシティプラットフォーム協議会(以下、CSPFC)の提案を受け、2023年からスマートシティに向けた実証事業に踏み出しています。
「しかし、見守りサービスやコミュニケーションツールは、多くがタッチポイントにスマートフォンを利用したものでした。15歳以下の子どもや75歳以上の高齢者はスマートフォンを保有していない、あるいは使いこなせていないケースが少なくありません。特に高齢者については、スマートフォンを使わずに見守りができる仕組みも必要でした」と白岩氏は話します。
こうした若葉台団地の要望に応えたものが、NTTデータが提供する「ボイスタ!」です。「ボイスタ!」は、Alexa搭載の画面付きスマートスピーカー「Amazon Echo Show」をタッチポイントとして利用し、音声による情報配信をはじめ、対話や声かけによる健康促進や見守り、ビデオ通話やコンテンツ配信など、話かけるだけで多彩な機能を利用できるサービスです。
一般財団法人 若葉台まちづくりセンター 総務部 部長 丸野 豊 氏は、「『ボイスタ!』を知ったのは、CSPFCを通じてAmazonやNTTデータを紹介されたことでした。『ボイスタ!』を採用した理由は、音声による操作ができることに加え、自治体における数多くの導入実績や、高齢者の利用率も高いこと、さらに地域情報の配信も可能なためコミュニケーションを促進できると考えたからです。そして、導入や運用にあたってNTTデータからしっかりとしたサポートをしてもらえることも採用の決め手となりました」(丸野氏)
「ボイスタ!」には、Alexaを法人向けに提供するサービス「Alexa Smart Properties」が活用されています。より利便性の高いサービスを実現していくには、Alexa Smart Propertiesの活用は欠かせないものでした。NTTデータ 第二金融事業本部 しんきん事業部 事業推進担当 課長代理の酒井 宏幸 氏は、「Alexa Smart Propertiesの利点は、サービス提供側がAlexaを統合管理できることです。利用者がアカウントを個人で作成したり、運用者が1台1台機器をセットアップしたりする必要がありません。加えて、地域イベントを登録して配信したり、声かけに関するスキルを開発したりするなど、若葉台団地様のニーズに応じて利用方法をカスタマイズできることも大きなメリットでした」と説明します。
「ボイスタ!」の導入は2024年1月に決定し、NTTデータの支援のもとで、3月には30戸への導入が完了し実証実験が進められています。白岩氏はNTTデータのサポートに対して、「地域の利用者や、見守りを担当するNPOスタッフへの説明など、導入や利用にあたって必要なことをしっかりサポートしてもらえており、とても助かっています」と評価します。
また若葉台団地は、実証実験を進めるなかで、定期的にNTTデータとの議論も重ねながら、「ボイスタ!」の利用拡大に向けたコンテンツの拡充にも取り組んでいます。
現在、「ボイスタ!」を通じて多彩なサービスが提供されています。例えば、見守りについては、朝昼晩にEcho端末が「おはようございます」「リフレッシュに体操をしませんか」「今日一日はどうでしたか」などと居住者に声かけを行っています。「ボイスタ!」のオリジナルスキルから居住者に呼びかけをする仕組みを追加の実装後、利用率も2~3倍ほど増加(※1)しました。「毎朝『ボイスタ!』が挨拶してくれるので寂しくないわと言ってくれる独居世帯の方もいます」と菅尾氏は話します。
また、声かけに対する反応は、管理画面から確認することができます。このほかにも、家庭に側にも置かれたEcho端末を通じて、家族とのビデオ通話による相互の対話も行われています。
一方、情報配信では「ホームカード」と呼ばれるEcho端末に常時表示されている画面を通じて、月に20件ほどの地域イベントの案内が行われています。また、最近ではAmazon Musicも利用可能となり、好きな曲を聴いて楽しんでいる利用者も多いといいます (※2)。また、子供向けにもクイズや昔話といったコンテンツが提供されており、「親のもとで、Echo端末が子どもに絵本を読んでくれたり、子どもが楽しんで歯磨きをしてくれたりしているので助かっています」という保護者からの声も多数寄せられています。
現在「ボイスタ!」の利用状況をモニタリングしていますが、これまでの見守りは、訪問の場合、1件あたり約30分ほどかかっていたのが、約10分程度に短縮できる見込みです(※3)。今後、防災情報など地域情報の発信を拡充させていくほか、認定NPO法人若葉台のスタッフと連携しながら、さらなる見守りサービスの強化にもつなげていく考えです。
Alexa Smart Propertiesの導入によって、「誰一人取り残さないスマートシティサービス」の実現を進める若葉台団地。高齢者や子供にも優しい暮らしを目指すこの取り組みにこれからも目が離せません。
1979年に神奈川県住宅供給公社が横浜市旭区に開発した横浜若葉台団地は、東京ドーム約19個分の敷地内に高層住宅をはじめ、病院、銀行、教育施設、商業施設を有する大規模団地です。少子高齢化の進展によりさまざまな課題が浮上するなか、デジタル技術の活用による見守りサービスや、コミュニケーション活性化などに取り組んでいます。
*取材時期 2025年3月
*記載内容(役職、数値、固有名詞等)はすべて取材時の情報です。