会社名: 株式会社NTT データ
業種: 電気通信事業
設立: 2022年11月1日
所在地: 〒135-6033 東京都江東区豊洲3-3-3 豊洲センタービル
従業員数: グループ全体 197,800名(2025年3月現在)
ホームページ: https://www.nttdata.com/jp
大手ITサービス企業として、金融、公共、法人といった分野を中心に、基幹系システムや業務インフラの提供を行う株式会社NTTデータ(以下、NTTデータ)。システムやプラットフォーム構築の実績を重ね、お客様が抱える課題を数多く解決してきました。近年ではデジタル技術を活用して多くの業態を横断し、より多くの社会課題の解決へ力を注いでいます。第二金融事業本部 しんきん事業部 事業推進担当 部長の村木 智子 氏は、「しんきん事業部では、これまで信用金庫向けに共同利用型のシステム構築などを行ってきました。この知見を活かして業態の垣根を越え、デジタルでつながり合うことで、多くの方が便利に利用できるプラットフォームの実現を目指しています」と話します。
NTTデータが取り組んできた信用金庫向けのシステムは、利用者が65歳以上の高齢者も多かったといいます。さまざまなサービスがスマートフォンに集約されるなかで、同社ではスマートフォンの操作が苦手だったり、うまく使えなかったりする人にとって、むしろサービスを利用しにくくなっているのではないかという課題感を持っていました。
手指の乾燥でスワイプがうまくいかない、目が見えにくく小さなボタンのタップができないなど、スマートフォンの操作自体、難易度が高いことが、同社が市場調査で実際に感じたリアルな高齢者の姿として分かってきました。村木氏は、「高齢者に寄り添ったインターフェースがあれば、デジタル機器やサービスをより利用しやすくなると感じていました」と語ります。
そこで注目したのが、音声操作ができるスマートスピーカーです。第二金融事業本部 しんきん事業部 事業推進担当 課長の田中 菜津子 氏は、「音声操作であれば、デバイス画面上のボタンをタップする必要がないので、高齢者にも使いやすいのではと考えました」と話します。
スマートスピーカーを通して声でアプリを操作できる、そして年齢を問わず使いやすいサービスを作りたい。NTTデータでは、当時サービスを展開していた企業から「ボイスタ!」の事業を譲り受け、サービス検討を開始したのが2018年のことでした。
「ボイスタ!」は、スマートスピーカーを活用し、家電との連携や音声による情報配信をはじめ、キャラクターとの対話機能や声かけによる利用促進、見守り機能を備えた、高齢者を中心とする人々の暮らしを豊かにするデジタルサービスです。
NTTデータでは、「ボイスタ!」の機能強化に向けて、スマートスピーカーで使用できるスキルの開発を進めていきました。当時、音声で操作はできるものの、スキルの呼び出し手順が複雑だったり、音声が認識されにくかったりするなど、技術的な課題があったといいます。また設定面でも、一台ごとに利用者の自宅に訪問して行う必要があり、作業の負担になりつつありました。さらに今後「ボイスタ!」を広く導入を進めるうえでも、この負担は高いハードルとなっていました。
そこで、Amazonからの紹介によってNTTデータが採用したのが、「Alexa Smart Properties」です。Alexa Smart Propertiesは、マンションやホテル、高齢者施設向けにカスタマイズされたAlexaサービスです。田中氏は、「望んでいた機能がすべて揃っていました。スマートフォンとの連携の必要がなく、管理画面からデバイスの一括設定が可能です。Wi-Fiに接続できていれば、Echoデバイスを電源につなぐだけで『ボイスタ!』を利用できます」と話します。
また、利用開始時に『ボイスタ!』を起動する必要が無い点も大きかったと田中氏は続けます。「これまでは、最初に『ボイスタ!』を起動しなくてはならないため、『ボイスタを開いて』と話しかける必要がありました。Alexa Smart Propertiesなら、このステップが不要になります」(田中氏)
さらに、Alexa Smart Propertiesを採用することで、遠隔からのメンテナンスや、複数端末の一括管理もできるようになり、介護施設やマンションなどの規模が大きな台数の導入も可能になりました。
「ボイスタ!」は現在、介護施設をはじめ、見守りに課題を持つ地域などで導入が進んでいます。
介護サービスを展開するニチイケアパレスでは、入居者の個室にEcho端末が設置されています。入居者は、日々会話や体操を楽しむなどそれぞれの使い方を見つけ、積極的に活用しています。「入居者様から『誰が話しているんですか?』と聞かれることもあるほど、人が対応しているように感じている方もいます。」と第二金融事業本部 しんきん事業部 事業推進担当 課長 大河原 さよ子氏は語ります。
「認知症で食事中に食べることを忘れてしまう方に対し、Echo端末のアナウンス機能で『お食事はお楽しみいただけていますか?』など数分おきに食事を促した結果、食事をしっかり取れるようになり、栄養改善につながったというモニター調査結果(※1)も出ています。」(大河原氏)
Alexa Smart Propertiesを使うことで、より自然なやりとりに加えて、利用者の名前を呼ぶこともできるようになっています。独居の方からは「久しぶりに家の中で名前を呼んでもらえてうれしい」という声もあると、村木氏は話します。
また、神奈川県の若葉台連合自治会と認定NPO法人若葉台では、地域一体となって高齢者の見守りに活用するための実証実験が進められています。田中氏は、「『ボイスタ!』では、会話を通して見守りを行っています。家族や友達とのビデオ通話もできるので、人と会話しているような温かみのある見守りができるとの声をいただいています」と話します。
今後、同社ではさらに日常会話のやりとりの回数を増やしたり、会話の中から利用者の好みにあった話題を提供したりするなど、一人ひとりに寄り添った機能を拡充していく予定です。村木氏は、「独居高齢者は2〜3日の間、誰とも話さないという方が2割以上いるというデータがあります(※)。しかし、当社のご家族向けアンケートや利用者のログ分析によると、Echo端末を通して話すことで発話の機会が増えている傾向があり、発話の回数は1日あたり平均5回という結果が出ています(※2)。このことから、独居高齢者への行動変容を促すことができていると感じています。『ボイスタ!』が、日々の生活に前向きな変化をもたらすきっかけになるよう、これからも開発を続けていきます」と語ります。
情報技術で新しい「しくみ」や「価値」を創造し、豊かで調和のとれた社会の実現を目指すITサービス企業。コンサルティングからシステムの構築や運用まで、世界50カ国以上で幅広いサービスを提供しています。お客様とともに、ビジネス変革や社会課題の解決にも積極的に取り組んでいます。
*取材時期 2025年3月
*記載内容(役職、数値、固有名詞等)はすべて取材時の情報です。