会社名: 株式会社ニチイケアパレス
業種: 福祉・介護
設立: 1964年6月
所在地: 〒101-0062 東京都千代田区神田駿河台4-6 御茶ノ水ソラシティ
従業員数: 3,601名(2025年4月1日現在)
ニチイグループの一員として、介護付有料老人ホーム、住宅型有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅を運営している株式会社ニチイケアパレス(以下、ニチイケアパレス)では、高齢者が安心して生活できる環境を提供しています。経営管理本部 管理部 シニアマネージャーの舟山 勝文 氏は、「当社では、『お客様の笑顔と幸せを実現する』という企業理念のもと、高齢社会の課題を解決すべく、お客様一人ひとりに合わせたケアを提供することで、豊かな毎日を送っていただくよう努めています」と話します。
同社では、利用者のQOL向上やスタッフの業務効率化を図るため、ITを積極的に採り入れてきました。舟山氏は、「巡視の気配でお客様の目が覚めてしまうこともあったため、センサーを導入していました」と話します。
また、コロナ禍で面会制限が難しかった時期には、家族と話す機会を作るため、タブレット端末を使ったビデオ通話なども試してきました。ニチイホーム 練馬高野台 ホーム長 嶋木 亮輔 氏は、「タブレットの台数が限られていたため、同じ日時に複数の方が希望されても対応できない、また、接続のための設定に対応する職員の負担も増えつつありました」と語ります。
こうしたなか、ニチイケアパレスでは入居者の家族が活用していたAmazon Echo端末に注目しました。「Echo端末なら、お客様が自分で家族とつないで話ができ、職員の負担を抑えることができます。しかし、市販のEcho端末は、最初に個々のAmazonアカウントの設定が必要となるなど、新たな課題が浮かび上がりました」(舟山氏)
課題の解決を図るなか、同社ではNTTデータが提供する「ボイスタ!」を知り、話を進めていきました。「ボイスタ!」には、高齢者施設向けにカスタマイズされたAlexaサービス「Alexa Smart Properties」が搭載されており、入居者がアカウント作成などの初期設定をすることなく、施設に入居したその日から、音楽再生(※1)や家電操作など生活を楽しく便利にする様々な機能を使うことができます。
ニチイケアパレスでは、NTTデータと打ち合わせを重ね、課題やニーズを細かく見直し、「ボイスタ!」の機能をカスタマイズしていきました。
さらに同社では、NTTデータの協力のもと、2023年11月から約1カ月かけて、ボイスタ!の本格導入を控えた南大井の施設においてトライアルを行っています。数名の入居者に使っていただき、実際に高齢者でも使えるものなのか、どのように活用されるのかを介護現場で実証していきました。株式会社NTTデータ 第二金融事業本部 しんきん事業部 事業推進担当 栗原 崇 氏は、「トライアルは、入居者の利用状況を把握する目的がありました。南大井の施設で得られたトライアルの結果をもとに、『ボイスタ!』の機能改善を重ねていきました」と話します。
そして2024年には、同社は練馬高野台や板橋徳丸の施設においても、約1ヶ月間のトライアルを実施した上で「ボイスタ!」を各施設へ導入しましたニチイホーム 練馬高野台のトライアルで分かったことは、高齢者でもAlexa Smart Propertiesを使いこなせることと、使い方も多岐にわたっていることでした。
ニチイホーム 練馬高野台 統括チーフ 小山 貴大 氏は「ニチイホーム 練馬高野台では3名がトライアルに参加しましたが、それぞれ使い方が異なっていました。日常のコミュニケーションの1つとして話し相手にしている方や、神経衰弱で脳トレ、体操に使っている方など、一人ひとりの興味に応じたさまざまな使い方を見つけていました」と語ります。
同社は、トライアルを進めるなかで、高齢者であっても音声での Alexa Smart Propertiesの操作は難しくないことに加えて、入居者のQOL向上を実感できたとしています。同社では、2023年12月の南大井への本格導入を皮切りに、ニチイメゾン長岡京、ニチイホーム 練馬高野台、ニチイホーム 板橋徳丸と順次導入が進んでいます。しだいに「ボイスタ!」の活用も広がりをみせ、導入後の利用率は9割に上っています(※2)。Alexa Smart Propertiesは、多くの方が利用されていて、「ボイスタ!」との組み合わせで想像以上に活用されていることがわかっています。
Alexa Smart Propertiesと「ボイスタ!」の導入後、職員の意識も大きく変化したといいます。小山氏は、「介助で両手が塞がっていても、声で操作できるので、声でテレビや照明などを操作できるのは便利です」と語ります。「自立支援は高齢者の生活の質を高め、認知症の進行を予防するうえでも大切です。Alexa Smart Propertiesを使うことによって、お客様自身でできることが増えていると感じています」と嶋木氏は続けます。
また、部屋に配置されたデバイスに通知ができる「ボイスタ!」のアナウンス機能では、毎日の食事やレクリエーション、移動販売の告知など、入居者の生活リズムを整え、快適に過ごせる環境づくりに貢献しています。さらに「ボイスタ!」には、おみくじや神経衰弱といったミニゲームもあり、入居者と職員の会話のなかにも自然とAlexaが登場することも増えているといいます。
「部屋に戻ったとき『Alexa、ただいま』と自然に話しかけているのを見ると、家族や友達がいるような感じで、Alexaが日常生活の一部になっているのを感じます。『Alexaがこんなことを言ったのよ』という話をされる方もおり、コミュニケーションのきっかけにもなっています」(小山氏)
Alexa Smart Propertiesと「ボイスタ!」は、今では入居者の生活の一部になりつつあります。認知症が進んでいる入居者にもご利用いただいています。
「耳の遠い方が何度も聞き返しても、Alexa Smart Propertiesは真摯に受け答えしてくれるので、そこに人とは違う良さも感じます」と嶋木氏は語ります。今後は、Alexa Smart Propertiesと「ボイスタ!」との利用頻度や利用用途を把握しながら、介護の現場でさらなる最適化を進めていくとしています。小山氏も、「自然な会話を長く続けられるようになったら、より会話も充実していくと思います。また、顔認証で入居者を認識して、それぞれに応じた声かけができたらうれしいです」と語ります。
「ボイスタ!」導入施設から入居者の家族に対して、イベントや食事の献立などのLINEによる情報配信も行っています。Alexa Smart Propertiesと「ボイスタ!」は、入居者・家族・施設のつながりを強くする仕組みがあり、介護現場においてさらなる広がりが期待されています。
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*取材時期 2025年3月
*記載内容(役職、数値、固有名詞等)はすべて取材時の情報です。