会社名:株式会社ナガヨシ
業種:福祉用具のレンタル・販売・住宅改修
設立:1939年6月
所在地:〒879-6601 大分県豊後大野市緒方町馬場31番地1 2F
従業員数:51名(2025年3月現在)
ホームページ:https://www.nagayoshi.info/
株式会社ナガヨシは、大分県を中心に高齢者向けの福祉用具のレンタル・販売、および住宅改修を手がけています。近年ではIoTを用いた見守り関連機器の導入など、デジタル技術を利用したサービスの提供にも積極的に取り組んでいます。
その背景には、大分県を取り巻く介護・医療に関する課題がありました。代表取締役社長を務める長吉 友博 氏は、「大分県では少子高齢化が進み、要支援・要介護状態の方が、病院の受診や薬局での処方薬の受け取りに苦労するケースが増加しています。現在、薬剤師の地域偏在が指摘されておりますが、大分県内には薬学部のある大学がないこともあり、薬剤師の人材確保が困難となっており、訪問による服薬指導など十分な医療サービス提供の限界を迎えつつありました。医療・介護従事者の人手不足が深刻化するなか、デジタル技術を活用した包括的な介護・医療支援の提供が不可欠と考えていました」と説明します。
そして、ナガヨシが次なる取り組みとして実証実験に踏み出したのが、オンラインによる包括的な介護・医療支援です。介護支援が必要な方が自宅にいながら診療や服薬指導を受けたり、処方薬の配送サービスを利用したりするほか、ケアマネージャーによるモニタリングを可能とするサービスの実現です。
オンラインによる包括的な介護・医療支援の実現に、当初、ナガヨシはタブレットとアプリケーションを組み合わせたサービスの提供を検討していました。しかし、求めていた要件に対して、外部にシステム開発を委託した場合のコストや要件などが合わなかったといいます。その後、最終的にナガヨシが選択したのが、Alexaを法人向けに提供するサービス「Alexa Smart Properties」です。Amazonと契約するソリューションプロバイダーを通じて、高齢者施設やホテル、マンション向けにAlexaをカスタマイズできるサービスで、Alexa Smart Properties対応の「Amazon Echo Show」により、音声を利用した多彩なサービスを提供するものです。
「Alexa Smart Propertiesを知ったのは、熊本市における実証実験のニュースに触れたことでした。高齢者に向けた地域包括支援に際して、Echo端末を用いたビデオ通話などの取り組みが行われているのを目の当たりにし、『これならオンラインによるモニタリングや服薬指導・診療などが実現できるのではないか』という希望を抱きました」(長吉氏)
このほかにも長吉氏は、「利用者が面倒な操作や設定を行うことなく、音声応答でさまざまな機能を利用できること、端末の一括管理ができるので、リモートでのシステム更新やトラブル対応など効率的な運用が実現可能であること、見守り機能のほか多彩なエンターテインメントやリマインダー機能を提供できることも採用の理由です」と話します。
今回、Alexa Smart Propertiesの導入やアプリケーション内のスキル開発を支援したのが、NTTビジネスソリューションズです。
「NTTビジネスソリューションズは、私たちが実現したいことに対して最も熱心に耳を傾け、当社に寄り添った提案をしてくれました。また、すでにAlexa Smart Propertiesの導入実績があったことや、NTT西日本グループとしてのサポート力に期待したことも同社をパートナーとして選択した理由です」(長吉氏)
NTTビジネスソリューションズのサポートのもと、2025年2月から実証実験が開始されました。実験では、合計20台のEcho端末を高齢者宅や福祉施設に設置しています。端末はすべて一括管理されており、市内在住で通院が困難な介護支援が必要な方や高齢者を対象に、Echo端末を用いた医師や薬剤師とのビデオ通話による診療や服薬指導、ケアマネージャーによるオンラインモニタリングなどが行われています。
実証実験は2025年7月末まで行われる予定ですが、すでにさまざまな効果が現れています。豊後大野市の社会福祉法人 任運社 任運社総合相談支援センターにおいて、所長を務める吉野 亮 氏は、「寝たきりの方や車椅子でしか移動できない方が通院する時には、私と2人のヘルパーの3人でベッドから車椅子に移乗介助が必要な方もいます。加えて、病院への行き帰りや待ち時間、診療を含めると3時間半ほどかかるケースもあります」と振り返ります。
「オンラインによる医師の診断で、ヘルパーによるサポートが不要になったほか、病院に移動したり、院内で診断を待ったりする時間はゼロになった事例があります」と吉野氏は続けます※。
また、ケアマネージャーは月1回、高齢者の自宅訪問を行っていますが、Alexa Smart Propertiesの活用により、必要に応じて移動時間なしで状況を把握できるようになります。またオンラインで状況が確認できる場合、制度では訪問が2カ月に一度でよいと決められています。
「訪問看護師などが呼び出しを受けた際も、オンラインで確認ができるようになると、訪問前にすべき指示を的確に行うことができ、重篤者に対する早めの処置につながり、病状の早期回復や重症化の軽減につながる可能性もあります。訪問せずに済む可能性も見出すことができます」(吉野氏)
オンラインによる服薬指導においても、多くの効果が見られています。
大分県豊後大野市で「まえはら調剤薬局」を運営する、有限会社はらからの代表取締役 前原 理佳 氏は、「これまで来局が困難な場合には、薬剤師が自宅まで処方薬を配達し服薬指導を行っていました。Alexa Smart Propertiesを通じてオンラインによる服薬指導が可能になったことで、処方薬の配達は薬剤師でなくても済むようになっています。薬剤師が自宅に処方箋を配達する必要がなくなることで、薬剤師が他の業務に時間を使えるようになり、より早い対応や判断による医療サービスの向上につながると考えています」と話します。
このほかEcho端末を用いた音声による服薬時間の通知も行われており、利用者からは「話しかけるだけで操作できるため、便利で使いやすい」との声が多く寄せられているといいます。
Alexa Smart Propertiesを活用した、オンラインによる包括的な介護・医療支援の実証実験に取り組むナガヨシ。長吉氏は、「Alexa Smart Propertiesを介護や医療支援で活用していくためには、ほかの機器やサービスとの連携を検討しながら、高齢者や介護支援が必要な方をサポートするためのさまざまな取り組みを積極的に進めていきたいと考えています」と展望を語りました。
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*取材時期 2025年5月
*記載内容(役職、数値、固有名詞等)はすべて取材時の情報です。