ICT技術により地域課題の解決に貢献する「スマートスピーカーを活用した『郵便局のみまもりサービス』」にAmazon Alexa Smart Propertiesを採用―音声操作による遠隔の見守りを実現

Keith Tanaka Nov 28, 2025
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Smart Properties
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Alexa Smart Propertiesを活用したサービスの特徴
 
  • 高齢者にも使いやすい音声操作によるインターフェースで、遠隔での見守りを実現
  • Alexa Smart Propertiesにより管理画面で各端末の利用状況が把握でき、設定も変更が可能なため、管理者の手間を削減
  • 自治体や施設ごとのニーズに応じた、追加の機能開発が可能

会社名:日本郵便株式会社

業種:郵便・物流事業、国際物流事業、および金融窓口事業

設立:2007年10月01日

所在地:〒100-8792 東京都千代田区大手町二丁目3番1号

従業員数:169,961名

ホームページ:https://www.post.japanpost.jp/

「スマートスピーカーを活用した『郵便局のみまもりサービス』」で地域の暮らしを支える

全国に約2万4,000拠点ものネットワークを持つ日本郵便。郵便配達サービスのほか、金融窓口として全国でサービスを提供しています。執行役員 地域共創事業部長 竹中 正博 氏は、「郵便局のネットワークを活かして、事業の柱である郵便や物流、金融にとどまらず、地域の課題を解決したいと考えてきました」と語ります。

このネットワークによって、日本郵便では2001年から住民票など行政が発行する証明書の交付を郵便局で取り扱ってきました。2017年からは、郵便局員が高齢者の自宅を訪問して様子を確認する「郵便局のみまもりサービス」を開始。遠方で暮らす家族の様子に不安を持つ個人を対象にサービスを提供してきました。

しかし昨今、地域で見守る側の人手不足や高齢化も懸念されています。民生委員の数が足りないといわれるなど、地域を支える人材が減ってきているなか、「ICTを活用することで、より持続的な体制を構築できないか。『みまもりサービス』にICTを採り入れる価値があると考えました」と竹中氏は当時の課題について話します。

Alexa Smart Propertiesを活用し、非対面の見守りを可能にする

そこで、日本郵便が注目したのがスマートスピーカーです。見守る側と高齢者とのやりとりで、高齢者が戸惑うことなく利用できるものとして、音声操作に着目しました。スマートスピーカーは、高齢者にもやさしいインターフェースというだけでなく、アプリケーションの開発により遠隔での体調等の確認や行政からの情報発信など、活用の幅が広がる可能性も秘めています。

そこで日本郵便では、高齢者にも聞き取りやすい音声かどうかに気をつけながら、発話の聞き取り精度や画面操作のしやすさ、画面の視認性など使いやすさを重視して検証を行った結果、Amazon Echo Showが採用されました。「高齢者は手指の乾燥でタブレットの操作がうまくいかないこともあります。発話による操作は、インターフェースとして優れていると感じました」と竹中氏は話します。

日本郵便株式会社 執行役員地域共創事業部長 竹中 正博 氏

その後、実証やサービスの改良を重ね、「スマートスピーカーを活用した『郵便局のみまもりサービス』」の提供を開始しました。このサービスでは、Amazon Echo Show と日本郵便が開発した『見守りアプリケーション』を組み合わせ、Echo端末が利用者の生活リズムに合わせて体調や食事、睡眠などの確認の声かけを行います。自治体や民生委員はWeb管理画面、家族はLINEアプリを利用して、居住者の生活状況を遠隔で把握できます。

「管理者側では利用者に合わせた設定が可能で、『薬を飲みましたか?』という通知にしても、朝だけ通知する人、昼と夜に通知する人というように、利用者の状況に合わせて簡単に設定でき、みまもりサービスの質の向上につながっています。また、日常的な見守りに加えて、自治体が提供する防災情報の通知や行政サービスのお知らせの配信も可能です」と竹中氏は語ります。

また日本郵便は、Echo端末をホテルやマンション、高齢者施設向けにカスタマイズできるAlexa Smart Propertiesを活用しており、個人のAmazonアカウントを利用した各端末へのログインが不要になるほか、端末の設定変更を管理画面で行えるようになっています。設定済みの機器が利用者宅に設置されるため、電源を入れるだけで使い始められます。

「端末ごとに個人のAmazonアカウントでログインする必要がない点は、高齢者にAmazonアカウントを取得してもらう必要がなくなるため、現場の対応もしやすくなり負担が抑えられています」(竹中氏)

さらにAlexa Smart Propertiesは、セキュリティの面でも安心できるといいます。Alexa Smart Propertiesでは、ユーザーの発話履歴、音声アクティビティは保護され、安心してご利用いただけます。

天気予報や音楽など、暮らしに寄り添う機能で利用度が向上

「スマートスピーカーを活用した『郵便局のみまもりサービス』」は、家族が高齢者の異変に早期に気づくことをサポートするほか、家族から送られてきた写真を高齢者が利用する端末にスライド表示する機能も備わっています。これらは高齢者の孤独の緩和にもつながるものと期待されています。また、Echo端末の機能として、内蔵のカメラとマイク、画面を使って、離れて暮らす家族とビデオ通話をしたり、天気予報やニュースを表示したりできるほか、音楽も再生(※1)できるなどの機能が充実しています。

「見守り単体の機能では、日常的に使い続けてもらうのは難しいのではないかという懸念もありました。しかし、利用者が好きな曲が聴けたり、写真が見られたりすると、自然と毎日使いたくなるとの声が上がっています。こうした機能によってサービスの利用が定着してきています」(竹中氏)

導入先の1つである岐阜県恵那市における利用者アンケートでは、半数以上の利用者が肯定的に評価しています(※2)。「声で簡単に使える」「市のお知らせがすぐに届く」などの声が寄せられ、高い満足度を得られているといいます。自治体からも、「山間部など訪問が難しい地域でも、Echo端末を通じた状況確認が可能になり、民生委員や自治体職員の負担軽減にもつながっている」と評価されています。見守りという安心感に加えて、エンターテインメント性を併せ持つことで、見守りが利用者の生活に溶け込みつつあります。

地域を支えるインフラへ、高齢者施設や空き家の見守りにも展開

日本郵便では、Alexa Smart Propertiesを活用した見守りについて、自治体だけでなく高齢者施設にも活用の場を広げています。今後は、地域社会の安全で安心な暮らしを支える基盤として、さらなる価値の提供を目指しています。

高齢者施設への導入では、温度計付きのスマートリモコンと連動させて、室温が高くなる、または低くなると注意喚起する仕組みを提供。暑い時期の熱中症防止や寒い時期の低体温症対策に活用されています。

竹中氏は、「全国に拠点があるという私たちの強みと、Alexa Smart Propertiesの柔軟性を組み合わせることで、地域を支える仕組みづくりに大きく貢献できると感じています。ICTの活用が、これからの見守りには重要なポイントになると考えています。人と機器をつなぎ、見守りを支える仕組みを実現できるのが、Alexa Smart Propertiesの大きな魅力だと思います」と語ります。

全国ネットワークという郵便局ならではのインフラと、Alexa Smart Propertiesの柔軟性によって、「地域のだれもが安心して暮らし続けられる社会」の実現に向けて、日本郵便は新たな価値を届け続けます。

SP様プロフィール

郵便・物流・金融などの基幹業務に加え、全国約2万4,000局のネットワークを活かし、住民票交付や高齢者見守りなど、地域に寄り添うサービスを展開。高齢化が進むなか、ICTと人の力を融合させたサービスで、地域社会の持続可能な発展に貢献しています。

※1:音楽サービスの利用には別途登録・契約や料金が必要な場合があります。
※2:恵那市調査 調査期間:2024/9/30~2024/10/18 179世帯へのアンケート結果で、半数以上が「やや満足」と「大変満足」と回答

*取材時期 2025年4月

*記載内容(役職、数値、固有名詞等)はすべて取材時の情報です。