自治体名:岐阜県 恵那市
業種:公務
設立:2004年
所在地:〒509-7203 岐阜県恵那市長島町正家1丁目1-1
職員数:616人(2025年4月現在)
岐阜県の南東部に位置し、約45,000人が暮らす恵那市は、景勝地である恵那峡をはじめ、江戸時代の面影を残す岩村町の古い町並み、そして、郷土料理の五平餅や栗菓子の栗きんとんなど、豊かな観光資源に恵まれている地域です。
しかし、恵那市では少子高齢化が進むにつれ、さまざまな問題が浮き彫りとなっていました。恵那市長の小坂 喬峰 氏は、「全国的に加速している少子高齢化と人口減少に関する問題は、恵那市も例外ではなく、地域コミュニティにおける相互扶助の希薄化につながり、地域コミュニティ維持が難しくなりつつあります。また、特にその傾向が著しい地域では、独居高齢者の増加とともに、見守りを行う民生委員の担い手不足も進んでおり、民生委員一人あたりの負担も大きくなっていました」と説明します。
「私が2016年に恵那市長に就任して以来、デジタル技術はさまざまなハンディキャップを抱える方を支援するためにこそ使うべきであると考えています。そして今回、都市部に比べて過疎地域の課題解決と、そこに住む高齢者が安心して暮らせるよう、デジタル技術の力を活用しようと考えました」(小坂氏)
この考え方に沿うように、恵那市はデジタル技術を活用した見守りの実現と、地域コミュニティの活性化を実践してきました。「民生委員が見守り対象者の自宅まで行かなくても様子を確認できること」、「離れた場所に住んでいる家族も見守りに参加できること」「地域の住民同士で簡単につながりあえること」「警報発生時の迅速な情報提供や、恵那市からの市政情報の発信ができること」を要件に掲げ、取り組みを進めていきました。
この取り組みを支えるものとして選ばれたのが、日本郵便が提供する「スマートスピーカーを活用した『郵便局のみまもりサービス』」です。このサービスは、日本郵便が独自開発したみまもりサービス専用のAlexaスキルと、Alexa搭載の画面付きスマートスピーカー「Amazon Echo Show」シリーズによって実現されるものです。Echo端末が利用者の生活リズムに合わせて体調や食事、睡眠などの確認として声かけする一方で、自治体や民生委員はWeb管理画面、家族はLINEアプリを利用して、居住者の生活状況を把握できます。またWeb管理画面から自治体からのお知らせも配信できるほか、既読や未読も確認可能です。
さらにEcho端末による声がけや情報通知は、日本郵便のキャラクター「ぽすくま」が行ってくれるなど、利用者がより親しみをもってもらえるような工夫が施されています。そして、「スマートスピーカーを活用した『郵便局のみまもりサービス』」は、Alexaの法人向けサービス「Alexa Smart Properties」を通じて提供されています。
恵那市役所 まちづくり企画部 情報政策課 主査の古田氏は「みまもりサービスの導入には、Alexa Smart Propertiesを活用していたことも後押しとなりました。Alexa Smart Propertiesなら、遠隔地からでも複数のEcho端末を一括管理できるようになります。例えば、Echo端末に設定変更や機能追加が発生した場合も、その都度居住者宅へ訪問してEcho Show端末を回収・設定、再設置といった作業は必要ありません」と説明します。「また、Alexa Smart Propertiesであれば、より強固なセキュリティ対策が講じられていることも高く評価しました」と古田氏は続けます。
2024年4月から、恵那市飯地町をモデル地区としたみまもりサービスが開始されました。現在、209世帯中174世帯にEcho端末が設置され、日々サービスが利用されています。日本郵便 東海支社 地方創生室の鈴木 海友 氏は「導入に至るまでは、恵那市様と開発ベンダーを交えながら、課題の解消や必要な機能について定期的に打ち合わせを重ね、解決につながるサービスの実現に尽力しました。また、各家庭に設置後も機能面で住民から要望を伺うことで、さらなるサービス改善につなげられるように努めました」と話します。
日本郵便 東海支社 地方創生室の安藤 里佳子 氏も「今回、174世帯という非常に多くの家庭にみまもりサービスを導入させていただくにあたり、恵那市様の協力を得ながらスケジュール調整を行い、住民の皆様に導入をご理解いただけるよう事前資料の作成に努めました」と振り返ります。
日本郵便のサポートに対して、古田氏は「日本郵便の手厚いサポートにより、必要な機能の実装をはじめ、各家庭へのスムーズな設置、そして設置後の適切な運用が実現できました」と評価します。恵那市役所 まちづくり企画部 情報政策課 主事の森山氏も「迅速なサポートも日本郵便に対する評価につながっています。Echo端末に何か不具合が発生した際も、連絡すればすぐに対応してもらえるのでとても助かっています」と話します。
恵那市が飯地町の利用者に行ったアンケート結果によれば、みまもりサービスは、半数以上の利用者が肯定的に評価しています(※1)。
個別回答でも「声で簡単に操作ができて使いやすい」「市からのお知らせだけでなく、天気予報や音楽も聴けるようになったので、ラジオのように使っている」といった回答が寄せられています(※2)。
独居高齢者の見守りについても、音声による朝昼晩の薬の確認や健康状態のチェックが行われています。恵那市 民生委員児童委員協議会理事 飯地単位民生委員児童委員協議会会長の纐纈氏は「Echo端末からの声かけに対する居住者の反応の有無が、スマートフォンのLINEアプリからすぐに確認できるようになっています。これまでも定期的に独居高齢者宅を訪問し、状況確認を行っていましたが、みまもりサービスを通じて常に状況が把握可能になったことで、何か異常が疑われる場合にもすぐに対応できるようになりました」と評価します。
Alexa Smart Propertiesを通じたスマートスピーカーを活用した「郵便局のみまもりサービス」の導入で、少子高齢化によるさまざまな問題の解決に取り組む恵那市。古田氏は「デジタル技術を活用しながら、より利便性の高い住民サービスの実現を目指していきたいと考えています。そして、引き続き日本郵便にはパートナーとして、課題解決のための提案やサービスの提供を期待しています」と話しました。
岐阜県南東部に位置する恵那市は、愛知県と長野県に隣接した山紫水明の豊かな自然に恵まれた地域である。2004年10月、旧恵那市と恵那郡の岩村町、山岡町、明智町、串原村、上矢作町の5つの町村が新設合併し、新恵那市として誕生しました。近年では、デジタル技術による地域活性化と市民生活の利便性を向上させるDXにも積極的に取り組んでいます。
*取材時期 2025年3月
*記載内容(役職、数値、固有名詞等)はすべて取材時の情報です。